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大阪らんちゅう 当歳

見たところ特筆すべきところもない、素赤~猩々の大阪らんちゅう当歳魚。 体型、尾形、全てが「まあまあ」の域を出ませんが、この腹は数十尾残してじっくり飼っています。

なぜなら・・・

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大阪らんちゅう 親魚(♀) 透明鱗系

雌親がこのように、透明鱗を持つ個体だから。ところどころに普通鱗の輝きもあり、一見して赤白モザイク透明鱗のいわゆる「桜」に見えますが、少し特異な雰囲気を持つ魚。一昨年だったか、お世話になっているある方が、市場にストックされていた多くの大阪らんちゅうの中から、偶然見つけて抜いてきたものだそうです。

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大阪らんちゅう 親魚(♀) 透明鱗系

横見ではこのように、腹部を中心に普通鱗が分布していることがわかります。通常の桜とよばれるモザイク透明鱗との大きな違いは、全ての鰭(ひれ)がまるで猩々の魚のように全面赤(ベタ紅)であること。桜系の金魚では、鰭にはなかなか赤が入らず、大部分が白になるものです。

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大阪らんちゅう 親魚(♂) 普通鱗

そこで鱗性を確かめるべく普通鱗のオス親( ↑ )と交配し、採ってみたのが上の当歳魚たち(以下F1 = 雑種第一世代)。普通鱗とモザイク透明鱗は不完全優性の関係なので、仮に雌親がモザイク透明鱗であれば、F1は普通鱗とモザイク透明鱗がほぼ同率になるはずですが、実際は300尾ほど育ったF1全てが普通鱗でした。

と言うことは、雌親の透明鱗はモザイクではなく、普通鱗に対して劣性の可能性が高くなります*。そうであれば、前出のF1は見た目は普通鱗でも全ての個体が潜在的に透明鱗の遺伝形質を持っていることになり、F1同士の交配、あるいは透明鱗をもつ雌親との戻し交配を行えば、一定の割合で透明鱗の仔魚が産まれることになります。

そういうわけで、一見これといって美点のない当歳魚を残しているのは、次の世代を見ているからなのです。

*劣性の透明鱗としては網透明鱗(もうとうめいりん)があります。もみじ~と呼ばれる網透明鱗の品種群では、鰭が赤い個体も多く出るようなので、前出の雌親は見た目こそモザイク透明鱗のようですが、実際は網透明鱗の遺伝形質を発現しているのかもしれません。

2015年10月16日