金魚のめがね

昆虫写真家、金魚と暮らす日々。

2015年11月

見守る

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当歳時の姿(2013年4月孵化 → 2013年12月撮影)

先日の品評会、親の部で優勝となった魚の2年前の姿です。生後約8か月。六輪柄で太みはあり、欠点の少ない魚ではありますが、これといってよい所も見つかりません。右の鼻髭が白くて残念。尾ビレは親骨の張りがやや強く、尾筒周りが白抜けしています。

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二歳時の姿(2014年11月撮影)

約1年後、昨年秋の姿。全体に幅、量感が出ました。赤は濃くなり、目巣は銀から赤に。尾ビレもベタ紅となりました。尾先がやや下がり、張りも弱まって柔らかな尾に。この歳から品評大会に出品。二歳の部、三席を頂きました。

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現在(三歳時)の姿 (2015年11月撮影)

そしてさらに1年が経ち、現在の姿です。体はさらに太くなり、腰から尾筒にかけて点々と赤が浮いて、飛び更紗に。白かった右の鼻髭は紅白の斑模様となりました。尾はさらに柔らかくなり、泳ぐと後ろに畳みますが、止まるとフワっと開きます。そして既報の通り、本年品評大会において優勝を頂くことができました。今後は種親として活躍の予定です。


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成長と変化(写真のサイズ比率は一定ではありません)

この魚は大阪らんちゅうが成長に伴って大きく変化すること、その面白さや見極めの難しさを教えてくれました。しかし当歳時に先を見通すのは難しいもの。できるだけ多く残し、成長を見守るしかなさそうです。

大阪らんちゅう愛好会 第10回品評大会へ 後編

大阪らんちゅう愛好会、第10回品評大会のレポートもこれが最終回です。

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優勝 出品者:尾園 暁

昨年は2歳の部・3位となった魚。胴が太く尾幅もあるのですが、当時は真っ白な体で、鼻髭は片側が白く、評価を下げていました。

しかしこの1年で体には点々と赤が浮き上がり、飛び更紗に。白かった鼻髭にも赤が混じり、味のある柄となりました。大阪らんちゅうは親になるまで分からない面白さがあります。

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準優勝 出品者:池山 五郎

このブログでも何度か掲載してきた、池山会長の秘蔵っ子。バランスの良い体型に見事な更紗模様。

頭道具揃いで腹模様+六輪で、古い文献にある理想の24規定の一つ、「楊貴妃」に相当するものです。いつかは自分のところでも、こういった素晴らしい模様をもつ魚を生み出してみたいもの。

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三席 出品者:渡辺 和則
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四席 出品者:渡辺 和則

三席、四席は今回の品評会で多くの魚を上位に入賞させた、渡辺さんの魚。いずれも美しく非常に健康的な様子が印象的でした。コンスタントに良魚を作る、飼育技術と選別眼はお見事です。

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五席 出品者:仲 幹雄

おそらく昨年の二歳の部・優勝魚。やや長手の魚で色柄も良いですが、何よりも美しく広がった丸い尾が素晴らしい。

以上で品評大会の入賞魚レポートを終わります。

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最後に、今大会の成績表を掲載しておきます。念願の親の部、二歳の部で優勝、当歳で準優勝と、よい成績を頂けたことはとても嬉しく、アライグマ被害で飼育の継続さえ危ぶまれたなかで、たいへん励みになりました。

今年の大阪らんちゅう関連行事はこれですべて終了しましたが、気持は来春の仔引きへ向けつつ、慎重に飼育管理を続けていきたいと思います。




 

大阪らんちゅう愛好会 第10回品評大会へ 中編

昨日に続き、大阪らんちゅう愛好会の第10回品評大会から、上位入賞魚を紹介します。

今日は二歳の部。

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優勝 出品者: 尾園 暁

均整のとれた体型に大きく左右に張りだした尾、道具の揃った頭。昨年の品評大会で、当歳の部・準優勝だった魚です。無事に1年を過ごし、優勝することができました。

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準優勝 出品者: 渡辺 和則

欠点がほとんど見当たらない、美しい魚。親になると迫力を増すタイプでしょう。

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三席 出品者: 渡辺 和則

白い体に赤い帯の入った、品のある魚。三つ尾なのでより“大阪らんちゅうらしさ”を感じる一尾です。
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四席 出品者: 板谷 広義

色模様は寂しいですが、がっしりとした体形が魅力的。
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五席 出品者: 尾園 暁

コロコロとした丸手の一尾。尾幅がそこそこあり、頭道具も揃っていて見栄えのする魚ではあるのですが、少々バランスを欠いて泳ぎが不安定。それでもここまで無事育ってくれたことに感謝です。

明日はいよいよ後編。親魚の部の入賞魚を紹介します。


*お知らせ
本日、大阪らんちゅう愛好会のHPが更新されました。
www.osakaranchu.com
トップページに品評会当日の簡単なリポート、そしてGalleryページには入賞魚をはじめ、全出品魚が掲載されています。ぜひご覧ください。

大阪らんちゅう愛好会 第10回品評大会へ 前編

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池山会長 開会の挨拶

2015年11月15日(日)、愛知県豊川市の向坂養魚場にて、大阪らんちゅう愛好会の第10回品評大会が開催されました。 

好天にも恵まれて参加者・出品魚や見学者も多く、また、NHK大阪のテレビ取材も入り、たいへん活気ある会となりました。

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魚だまりで審査を待つ出品魚

出品魚は数だけでなくその質も年々向上し、その魅力が高まっています。

ここでは当歳、二歳、親魚の順で各部門5席までに入賞した魚を紹介しますが、上位入賞魚以外にも素晴らしい魚が多いので、出品魚は全て大阪らんちゅう愛好会のホームページで近日中にアップされる予定です。しばし待ちください。

なお今回の審査員は各部門共通で 委員長:池山五郎会長、審査員:川田洋之助・板谷広義の各氏です。

本日の記事ではひとまず当歳魚をピックアップ。

当歳の部
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優勝 出品者:池山 五郎(会長)
 
品のある六輪柄の当歳魚。赤い鼻髭も備えています。

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準優勝 出品者:尾園 暁
 
頭は道具なしで寂しいですが、 目幅があってがっしりした体形に鹿の子更紗。渡りの広い丸尾を備えています。

アライグマの被害でほとんど壊滅した我が家の当歳魚ですが、わずかに残ったなかの1尾。

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3席および池山賞 出品者:仲 幹雄 
 
渡りのある大きな尾に丸手の体型。きれいに染め分けられた更紗模様と、とても美しい当歳魚。 今回から設けられた「全出品魚の中から会長の選ぶ1尾」である池山賞に輝きました。

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4席 出品者:松島 悟 

背中の紅一点が目を引く、バランスのよい体型の1尾。成長すると迫力が増し、より素晴らしい姿を見せてくれることでしょう。

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5席 出品者:尾園 暁

小ぶりな丸手の1尾。やはりアライグマの魔の手を逃れた、わずかばかりの当歳魚から無理やり選んで連れてきました。すでに抱卵しているようで少々腹が出過ぎですが、これも成長した姿を見てみたい1尾です。

個人的には、出品魚がほとんど選べない状況で、準優勝と5席に選んで頂いたことは大変励みになり、飼育を続けていくモチベーションを与えられた気がします。これ以上被害を出さないよう飼育環境には一層気を配り、今後の飼育に取り組んでいきます。

さて、次回、中編では2歳魚の部、優等魚をご紹介する予定です。

2015年11月15日 向坂養魚場にて。
 

アライグマ騒動

屋外での金魚飼育を始めて2年半ほど。数か月前から、屋外飼育場でフードタイマーが壊されたり、餌の入った密閉袋が切り裂かれて中身を食べられたりといったことが起きていました。しかし魚には被害はなく、どうせカラスかハクビシンあたりがイタズラしているのだろうと、あまり深刻にもとらえていなかったのですが、先月になってそうもいっていられない状況となりました。

飼育しているコンテナには、鳥獣害防止策として金網を着け、その上に重石を載せていたのですが、その重石をずらして金網の隙間から手を入れたようで、中に入っていた大阪らんちゅうの当歳魚、約20尾が全て食べられてしまったのです。隣に置いてあったコンテナも同じ被害に遭い、計約40尾を一夜にして失ってしまいました。後に残ったのは水底に沈んだ鱗だけ・・・

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金網に残った体毛

残された体毛や状況から見て、犯人はアライグマと推定。これはまずいと重石をレンガからコンクリートブロックにして数を増やし、水深を浅くして網の隙間から手を入れても届かないように工夫しました。その結果、4週間ほどは何事もなく過ぎて、ああこれで大丈夫かと安心していたのも束の間・・・

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投げ飛ばされたブロック、引きちぎられた金網、からっぽの水槽・・・

またやられました。1度目と同じような状況で、今度はいくつものコンクリートブロックを投げ飛ばし、網を留めていた結束バンドを引きちぎって、大阪らんちゅう当歳魚約30尾が被害に。またも水底にキラキラと光る鱗だけを残して・・・。頭がいい上に腕力があるという、最悪の生きものに目をつけられてしまったようです。

おかげで今年の大阪らんちゅうはほぼ壊滅。品評会を目前に控えた時期に、悲惨な状況になりました。

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業者の方による、カゴ罠の説明

これはもう防御だけでは限界があると市に相談したところ、すぐに駆除業者を手配してくれ、翌日にはカゴ罠を設置することができました。特定外来生物であるアライグマ*の被害に対しては、無料で相談・駆除の手続きをしてくれる自治体も多いようです。

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設置したカゴ罠

このカゴ罠、仕掛けは単純で、餌の入った網袋を持ち去ろうと引っ張ると、ストンと蓋が締まるようになっています。餌にはアライグマの好むフルーツや実績があるという菓子類を使い、撒き餌として金魚の餌を周辺にパラパラと。

すると3日目の朝、撒き餌や菓子類を食べにきたアライグマの足跡がくっきりと残っていました。罠の中にも足跡がありましたが、残念ながら撒き餌だけ食べて帰ったようです。

その後数日、気配を感じない日が続きました。そして6日目。

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捕まったアライグマ

とうとう入りました。見事なアライグマの成獣です。憎き金魚の敵なので懲らしめてやりたいところですが、下手に手を出すと反撃されかねませんので、再び業者を呼んでカゴ罠ごと引き取ってもらいました。

これで一安心、と言いたいところですが、アライグマは群れで行動することもあるため、残党がいる可能性も考慮して新しい罠を設置。しばらく様子見です。

屋外飼育されている方へ。一度目をつけられてしまうと、金網や重石などではまったく歯が立ちません。60Lくらいのプラ舟だとひっくり返してしまうこともあると聞きます。また、ベランダや屋上でも被害に遭うことがあるようです。アライグマのいる地域ではくれぐれもお気をつけて。

*北米原産の哺乳動物であるアライグマは、そのルックスの愛らしさから日本にもペットとして輸入されて飼われるようになりましたが、実は非常に気性が荒く、飼いきれなくなって放たれる事例が多かったようです。その結果、現在では野外で繁殖して各地で増え、農作物などに甚大な被害を与えるようになりました。また寄生虫などの感染症の媒介をすることもあり、2005年には外来生物法によって特定外来生物指定を受け、現在では輸入や譲渡、飼育や移動が禁じられているほか、各地で駆除が進められています。
プロフィール

尾園 暁

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